年下御曹司は初恋の君を離さない
それがどうしてなのか全然わからないが、敵対されていては気分も悪い。
だからこそ、あまり彼女に近づくことを止めていたのだが……
どうして、彼女と藤司さんが二人きりでこんなところで話し込んでいるのだろう。それもなんだか深刻な様子がうかがえる。
私が顔を出していい雰囲気ではなく、だからといって戻ることもできずに、植え込みの陰に隠れた。
そんな私の耳に飛び込んできたのは、思わず耳を塞ぎたくなるような会話だったのだ。
「あら? 藤司さん。また大学にいらしていたの? ふふふ、久保さんに会うために来ているのかしら?」
「……違う」
「そうよねぇ、藤司さんはあんな男性みたいな子、好きじゃないわよねぇ? もし、久保さんが好みなんて聞いたら、貴方の趣味を疑うところでしたわ」
「……」
「でも、良かった。やっと私への愛に気がついてくださったのね! 嬉しいわ」
「ああ」
「ほら、きちんと言って? 藤司さん。そして、私を安心させて。そうしないと」
「俺は君が好きだ。あんな男みたいな女に欲情する訳がない。あり得ないだろう」
彼の本心を聞いてしまった。頭が真っ白になり、何も考えられない。
自分が身を隠していたことをすっかりと忘れていた私は、思わず立ち上がってしまった。
カサカサと草木の音を立てたため、二人にも自分の存在をバラしてしまったのだ。