年下御曹司は初恋の君を離さない

「まずは、家に帰ってからの宿題だ」
「は?」
「ここに俺のプライベートの携帯番号とメールアドレスが書いてある。メールでいいから、未来の連絡先を送ってこい」
「なぜですか! これがビジネスなら、社のメールアドレスでいいはずです」

 後日名刺を送らせていただきますから、と頑なに拒否したのだが、藤司さんはせせら笑う。

「いいのか? 未来」
「え?」
「社用のアドレス宛に、未来の秘密を色々と書いてやるぞ?」
「なっ!」
「未来の大学時代のあれやこれ。色々書いたら、どうする?」
「卑怯ですよ!」
「それに俺からメールすれば、何事かと小華和副社長に疑われないか? 俺と未来が知り合いだと知ったら、未来は必ず商談の場に居合わせなくてはならなくなるはず。それ以外のことでも、小華和堂幹部は未来に頼ってくることだろう」
「……っ」
「未来は俺と顔を合わせたくもなかったはずだ。怒りを込めた表情のまま、小華和副社長の前に立つことができるのか?」

 痛いところを突かれた。グッと押し黙ると、藤司さんは私の手に名刺を握らせてきた。
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