年下御曹司は初恋の君を離さない

「悪いことは言わない。俺に従っておけ、未来」
「……」
「小華和堂とのタッグは、必ず実現させてみせるから」
「……信じていいですか?」

 視線を落としたまま呟くと、藤司さんは「ああ」と力強い返事をくれた。
 ハッとして顔を上げると、藤司さんは学生の頃見た真剣な表情で頷く。

「絶対だ。あとで誓約書を書いてもいい」
「……」

 私は秘書だ。こんなの横暴だ。脅しだ。セクハラだ。
 そう言って撥ね付けたって誰も文句は言わないだろう。友紀ちゃんだって文句は言わないはずだ。

 だけど、チラつくのは友紀ちゃんのキラキラした笑顔だった。

 せせらぎとコラボ商品を作ってみたい。そんな夢を語っていた彼の顔が、どうしても忘れられない。
 私がここで批難の声を上げたら、彼の夢は粉々に砕け散ってしまう。
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