年下御曹司は初恋の君を離さない

「まぁ、今はとりあえずいい。だが、小華和友紀と付き合うことだけは止めろ。とにかくプライベートでは絶対に二人きりで会うな」
「ど、どうして……?」

 声が震えてしまう。どうして藤司さんにそこまで言われなくてはいけないのか。
 怒りが込みあげてくるが、解せない。

 藤司さんが、意地悪で言っているようにはとても見えないからだ。

 私にあんな酷いことを過去に言った藤司さんであるが、あの一件だけで他に嫌な思いをしたことはない。
 それどころか、いつもいつも私を助けてくれた人だ。
 だからこそ、あの畠山さんとの一件も今になって思うことだが、違和感を抱いてしまう。

 藤司さんはあのあと、言い訳も謝罪もしてこなかった。だからこそ、私はすべて受け止めて殻に閉じこもってしまったわけだが……
 あれから年数が経ち、私も大人になった。だからこそ思えるのかもしれないが、藤司さんは考えなしで行動する人ではないと思う。

 それに、私はいじけ続けていた今までの自分じゃないと自負している。
 そのきっかけをくれたのは友紀ちゃんだ。彼が私の長年のトラウマを溶かしてくれたのだと思う。
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