年下御曹司は初恋の君を離さない
「え?」
「まずは、我が社のラインナップの資料だ。これを渡すのだから、仕事をする気があるということがわかってもらえるだろう?」
藤司さんから受け取った茶封筒の中には、確かにせせらぎのラインナップを紹介するパンフレットが何冊も入っていた。
「こちらも約束は守る。だから、未来も必ず守ること。いいな?」
「……はい」
頷くしかなかった。どうやら、この取引は本気でするつもりらしい。
困惑しつつその茶封筒を抱きしめると、藤司は階段を上っていく。
「ほら、早く社長たちに追いつかないと不審がられる」
「……よくいいますよね」
「ははは。言い訳は俺が考えてやるから、安心して着いてこい」
「……」
無言のまま階段を上り始めると、藤司さんは小さく柔らかく笑ったのだった。