年下御曹司は初恋の君を離さない

 どうやら友紀ちゃんの携帯のようで、苦虫をかみ潰したような顔をして電話に出る。
 聞こえ漏れてくる様子から、相手は彼の父親である社長のようだ。

 友紀ちゃんが顔を歪めて抗議していたが、大きくため息をついて電話を切った。

「ごめん、未来さん。これから会社に戻らなくちゃいけなくなった」
「え? 仕事ですか?」

 それなら私も、と続けると、彼は首を小さく横に振った。

「未来さんはいいよ、今日はお休みなんだし」
「でも……」

 何かお手伝いをと思って友紀ちゃんに言ったのだが、彼は首をもう一度横に振る。

「大丈夫だよ。ありがとう、未来さん」

 ここまで言われてしまえば、首を縦に振るしかないだろう。
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