年下御曹司は初恋の君を離さない

 口には笑みが浮かべられているのだが、目が笑っていない。怖い、怖すぎる。
 頬を引き攣らせている私に、友紀ちゃんは言い聞かせるように苦言してきた。

「つべこべ言っていないでタクシーで帰ってね。今の未来さんは、僕を助けてくれていた頃のようにユニセックスな雰囲気じゃないよ? 素敵な女性なんだ」
「ゆ、友紀ちゃん?」

 運転手さんが聞いているのに、そんな恥ずかしいことを言わないでほしい。
 慌てる私には構わず、友紀ちゃんは勢いよく続けた。

「痴漢に狙われるかもしれない……想像しただけで怒りが込みあげてくる!」
「お、大げさでしょ? それに女性専用車に乗れば」

 私が言い終わらないうちに、友紀ちゃんは目を見開いて食ってかかってきた。

「ホームだって危ない、いや……路上だって危ないじゃないか!」
「……」

引き気味の私を見て少しだけ冷静になった様子の友紀ちゃんは、コホンと小さく咳払いをする。
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