年下御曹司は初恋の君を離さない
恐らくだが、私が大学四年生のときの出来事を友紀ちゃんは知っているのだと思う。
弟の紀彦経由でかなり私の情報を流されていたので、その辺りは間違いない。
ただ、紀彦の情報だけではその当事者が和菓子店せせらぎの専務である藤司さんだということは掴んでいないのだろう。
もし、掴んでいたとしたら、今日せせらぎのテナントに押しかけるようなことはしなかったはずだ。それに、藤司さんと対面しても友紀ちゃんの態度はビジネスシーンで見かける彼となんら変わりはなかった。
そのことに安堵しつつも、ふとその考えが浮かんできたことに対して恥ずかしさが込みあげてくる。
(やだ……、友紀ちゃんが私のこと好きだって認めているようなもの、だよね?)
先ほどまで青くなっていた顔だったが、次第にジワリジワリと熱くなってくる。
何度も友紀ちゃんは私に好意を見せてくれているし、実際に言葉でも伝えてくれていた。
だけど、それはなんとなく受け入れてはいけないと頑なに否定をしていたのだ。