年下御曹司は初恋の君を離さない
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「ねぇ、ゆきちゃん。未来様の様子が最近おかしいと思うのよ」
「……」
「心当たりはないの!?」
「……」
無言のまま書類に目を通している俺に、智子は痺れを切らしている様子だ。
未来さんのファンと公言している智子には、彼女の異変に気がつく鋭い嗅覚を持っているらしい。
未来さんの前では『未来さん』と『さん』付けで呼んでいる智子だが、俺の前では『様』付けで彼女を呼ぶ。
本当は未来さんに対しても『様』付けで呼ぼうと果敢にチャレンジしたらしいのだが、未来さんに諫められてしまったと智子はしょんぼりとしていたことがある。
未来さんの言い分が正しいのに、智子はその後もめげなかった。
『ゆきちゃん、私が未来様を〝様〟付けで呼んでもいいわよね? 副社長権限で許可してよ』
と、俺が副社長に就任してすぐに言われたことは、きっと一生忘れないだろう。
さすがは智子。自分の従姉妹とはいえ、未来さんに向ける愛情の深さには脱帽する。