年下御曹司は初恋の君を離さない
未来さんの情報は逐一俺に流してくれていたし、男避けもしていてくれたらしい。
とはいえ、別に俺が頼んだ訳ではない。ただただ、智子は未来さんがどれほど素敵な女性なのか、を人に話したくて仕方がなかっただけだ。
『今日の未来様、素敵なスーツを着ていた。素敵すぎる!!』だとか、『未来様が、なんだかお疲れの様子だったから、ハーブティーを入れて差し上げたの。そうしたら、喜んでくれたのよぉぉぉ。そのときの笑顔を写真に収めたかった! 永久保存版だったのに』といったように、とにかく未来さんのことだけを綴ったメールが毎日のように俺の元に届いた。
それは俺が海外にいる頃にも当然のように送られてきたし、特定の親族以外には内緒にして小華和堂の支社や工場などにいた頃にも未来さん情報は日課のように届いていたのだ。
一年前には、そのメールを智子がいる重役フロアのすぐ下の階で俺が受信していたとは、未だに気がついていないだろう。
もし、俺が本社で密かに仕事をしていたことを智子が知っていたら、間違いなく俺は智子に捕まって永遠に未来さんの話を聞かされることになっただろう。
未来さんにファン心理で接している智子にとって、彼女の異変、苦しみは自分のことのように感じているらしい。
心配そうな表情のまま、ウロウロと室内を歩き回る智子を見つつコーヒーに口を付けた。