年下御曹司は初恋の君を離さない
「聞いているの! ゆきちゃん。未来様、余所に男を作っているかもしれないのよ!?」
「ブッ……!!」
思わずコーヒーを噴き出してしまった。
デスクを汚してしまったために慌ててティッシュで拭き取っていると、智子はデスクをバンッと勢いよく叩きつつ俺を見下ろしてくる。
「私の……私の未来様なのよ!? 未来様は高潔な存在なんだから、男なんて野蛮な輩の近くになんて行かせられないわ」
「……」
もしかしたら智子は、俺の未来さんへの気持ちに気がついていて従姉妹として心配してくれたのかと思った。だが、それは違ったようだ。
さすがは智子である。斜め上の考えの持ち主で、親戚連中からも心配されている彼女らしい意見だ。
そして智子の未来さんではない。俺の未来さんだ。
口に出したら智子がうるさいので言わないが、そんなことに突っ込みをいれている自分に苦笑したくなる。
小さく息を吐き出していると、自分のことをバカにされたのかと思ったのだろう。
智子の眉はつり上がった。