年下御曹司は初恋の君を離さない

「この女性は、畠山みのりさんと言ってね。茶道の大家である畠山家のお孫さんだ。家元からどうしてもと言われてな。友紀との縁談を希望されているんだよ」
「ふーん」

 あほらしい。見合いなんてしている時間があったら、現在未来さんを取り巻いている現状を捜査しに行く方がいい。
 そんなことを思っていると、視界に未来さんの手が映った。その手は小さく震えており、慌てて顔を上げて彼女を見る。

 すると、真っ青な顔をして見合い写真を見つめていた。口元は戦慄かせて、クールな秘書の顔はどこへ消えてしまったのかと思うほどだ。

 その異変は、ずっと未来さんを見つめていた智子もいち早く勘づいた様子で慌てて彼女に走り寄った。

「未来さん、大丈夫ですか?」
「あ……ごめんなさい。ちょっと気分が悪いので失礼いたします」

 こちらが話しかける前に未来さんは副社長室を飛び出し、そのあとに智子も続いて出て行った。
 バタンという扉が閉まる音が聞こえたあと、父さんは口を開く。
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