年下御曹司は初恋の君を離さない

「体調が悪い……ってわけじゃなさそうだな」

 父さんが心配そうに彼女が出て行った扉を見つめている。

 俺も父さんに同意見だ。この縁談の女性と未来さん。二人は過去に何か関係があったに違いない。
 それも、未来さんの顔が青ざめるほどの、なにが……

「……未来さんが顔色を変えたのは、この女性の名前を出してからだったね」

 俺は慌てて釣書に手を伸ばす。彼女の生い立ちに、未来さんと関わる何かがあるかもしれない。
 サッと目を通すと、そこにヒントが隠されていた。

「未来さんと同じ大学出身……」

 年齢は未来さんと同じ歳で、二十八歳だ。ということは、同じ時期に同じ大学で過ごしたのだろう。顔見知りである可能性が非常に高い。

 俺は釣書をテーブルに放り投げると、父さんを睨み付けた。
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