年下御曹司は初恋の君を離さない
「いい加減にしてくださいよ、父さん。俺を焚きつけるつもりだったのはわかりますが、こういうことは勘弁願いたい。未来さんとの距離がようやく縮んできたというこのタイミングで!」
「わ、悪かったよ、友紀」
こんな事態になるなんて父さんは予想もしていなかったのだろう。
しかし、今の俺は怒っているのだ。すぐには許してやるつもりはない。
釣書と見合い写真を睨み付けながら、俺は苦々しく言葉を発する。
「この畠山っていう女と未来さんの間で何かがあったことは確かだ。彼女の顔、尋常じゃなかった」
父さんは釣書に手を伸ばし、それに目を通しながら頷く。
「この畠山家は茶道の大家だとは話しただろう? ここの家元であるじい様は政財界にも通じている。なかなかに癖がある人だぞ。そのじい様が推してきた見合いだ。会わずして断ることはできない」
「……」
「お前が断ることは始めからわかっていた。だけど、やらなければならない見合いだ。だからこそ」
「未来さんがいる場所で見合いが来ているという話をしたってことですね」
父さんが言い終える前に口を挟むと、父さんはバツが悪そうに頷いた。