年下御曹司は初恋の君を離さない
ようやく静かになった副社長室だが、やはり未来さんがいないのは寂しい。
本当は未来さんを追いかけていきたい。だが、今彼女の近くには俺がいない方がいいのだろう。
未来さんは、確実に俺に隠し事をしている。だからこそ、ここ十日間ばかり挙動不審な行動をしているのだと思う。
未来さんの異変の原因は、せせらぎの専務である藤司、そして縁談を押しつけてきた畠山が関わっているように思える。
「見えない糸で繋がっているようだ」
天井を見上げ、今も尚心を痛めているであろう未来さんを思って顔を歪める。
彼女の心の痛みは、遡ること七年前にあるはずだ。それは当時、紀彦に聞いていたから間違いはない。
紀彦に聞いた話では、未来さんが大学四年生の頃、男絡みで何かあったことだけは確かだと言っていた。
その頃を境に、未来さんの男性不信はますます酷くなっていったようで、紀彦が随分心配していたのだ。
その頃、アメリカにいた俺には未来さんの力になってあげることも、慰めることも出来ず歯がゆい思いをしていた。それについては、今も鮮明に記憶として残っている。