年下御曹司は初恋の君を離さない
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今日の私のメンタルは最悪だ。それでも、このメールの主に逆らうことができない。
小さく息を吐き出したあと、携帯を鞄にしまい込んで今出てきたオフィスビルの最上階を見つめた。
藤司さんとの契約―――呼び出したら必ず来い、さもなければ仕事は白紙に戻す―――とのことを、友紀ちゃんにずっと隠し通すなんてできるのだろうか。その不安は当初からあった。
相手は友紀ちゃんだ。私の下手くそな演技で騙し通せるとは鼻から思ってはいなかったが、やはり勘づかれてしまっていたようだ。
今朝の出来事を思いだし、盛大にため息をついたあと駅へと足を向ける。
チラリとロビ―に視線を泳がせると、そこには智子ちゃんが心配そうに私のことを見つめていた。
大丈夫よ、という気持ちを込めてほほ笑むと、彼女はなぜかウットリとした表情を浮かべている。
いつものこととはいえ、思わず苦笑してしまう。
お昼前の副社長室での一件で、周りの皆が私の体調を心配したため、定時で帰らされてしまったのだ。