年下御曹司は初恋の君を離さない
社長が友紀ちゃんに差し出したものは、お見合い写真だった。
ここ最近友紀ちゃんの祖父にあたる会長からお見合い写真が届くことが多く、そのたびに胸を痛ませてはいたのだ。
だが、友紀ちゃんは一度たりともその縁談に応えたこともなければ、見合いの席に出席することもなかった。
それどころか、見合い写真を一度も見る事なく「それ、会長に戻しておいて」と私にお願いして見向きもしていない。だからこそ、私はそのたびに安堵していた。
しかし、友紀ちゃんが見合いをよしとしていなかったとしても、周りはどうだろうか。 友紀ちゃんの伴侶には、それなりの家柄が求められているはずだ。
やはり将来的には会社のことを考えて結婚をしてしまうのかもしれないと不安を抱いていた。
好きだけでは通れない未来。それを目の当たりにしたようで、友紀ちゃんに縁談が持ち込まれるたびにやるせない気持ちにもなっていたのだ。
そう思っていた矢先の衝撃に、私の身体は恐怖と不安で身体が小刻みに震えていた。
社長が広げたお見合い写真、そこに映っている人に見覚えがあり、彼女の名前を聞いたときに昔の苦い記憶と押し寄せる不安にどうしようもない心境になった私はその場から逃げ出していた。