年下御曹司は初恋の君を離さない
すぐに追いかけてきてくれた智子ちゃんには「大丈夫よ」と伝えたのだが、どこまで彼女が信じてくれたのかわからない。
先ほどの彼女の様子を見る限り、私が強がりを言っているのだとバレているのだろう。
心配させてしまって申し訳ない気持ちと、本当のことを伝えることができない罪悪感に心が苛まれていく。
早く、友紀ちゃんに自分の気持ちを伝えたい。そう思うものの、せせらぎとのコラボが軌道に乗るまでは、好きだとは伝えられない、伝えてはいけない。そう思っている。
コラボの鍵を握っているのは、間違いなく藤司さんだ。その彼が、友紀ちゃんと私が一緒にいることを懸念している。
もし、私が友紀ちゃんに好きだと伝えたとしたら、藤司さんは全力で抗議してくるだろう。下手をすれば、仕事は白紙になる可能性だってある。それだけは絶対に阻止したい。
友紀ちゃんの夢を潰すマネだけは、絶対にしたくはないのだ。
駅に着くと、自分の実家方面に行く電車ではなく、ここ最近行き慣れた路線のホームを目指す。
今日の昼、藤司さんからのメールが入った。内容はいつもと一緒で『夜、せせらぎに来い』という簡素な内容だった。
だが、そのメールを確認していると藤司さんから再びメールが届く。
今日はやっぱり中止に、といった内容のメールかと思って見た瞬間、無防備に見た自分を呪った。