年下御曹司は初恋の君を離さない
「未来、お疲れ。今日も約束を守ることができたな」
「……」
「イイ子、イイ子」
私に近付き、髪をグシャグシャにするほどなで回す藤司さんに抗議した。
「もう! 髪の毛がグシャグシャになっちゃうじゃないですか!」
「ああ、そうか。悪い。あの頃の未来は髪の毛がショートだったから、つい」
「勘弁してくださいよ」
恨みがましい視線を藤司さんに向けると、彼は目尻にたっぷり皺を寄せた。
「ショートの未来も格別に可愛かったけどな」
「……よく言いますよね」
あのとき『欲情する訳がない』と断言していた人のセリフだとは思えない。
ここ数日で昔のように接することができるようになったが、私のトラウマはなかなかに根深い。
なんと言っても、目の前にいる藤司さんのことを昔は好きだったのだ。
好きな男性にあんなこと言われて傷つかない女性がいるのなら、お目にかかりたいものである。
ソッと視線を逸らした私に近付き、藤司さんは意味深に笑う。