年下御曹司は初恋の君を離さない

 藤司さんの鋭い声に私の身体はビクリと震え、動きを止めた。
 どれぐらいそうしていただろう。なかなか藤司さんは私を解放してはくれない。

「未来、目を瞑れ」
「え?」

 意味がわからず目を閉じると、おでこに柔らかい感触がした。軽く触れられたが、間違いなく藤司さんの唇だと気がつく。

 目を慌てて開けると、彼は道の向こう側を見据えている。緊迫した空気を感じて、キスの件について抗議ができない。
 あちこちに視線を向け、ようやく藤司さんは私を解放してくれた。

「お前、あとを付けられている」
「え?」
「とにかく、車に行くぞ」

 藤司さんに背中を押されながら、私はヨロヨロと車に乗り込んだ。
 静寂した空気が流れる車内で、藤司さんはエンジンをかけることもなく口を開いた。
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