年下御曹司は初恋の君を離さない

 あの当時、私は彼に浴びせられた言葉により深く傷ついていた。だが、それと同時に藤司さんの心も傷ついていたのだろう。
 裏切られた、失望した……藤司さんのことを何度心の中で詰っただろうか。

 だが、その裏で私は彼によって守られていたのだ。ずっとずっと、私を苦しめていた言葉は、一方で私を守ってくれていたなんて……

「藤司さん……ありがとうございます」
「未来?」
「私、藤司さんに守ってもらっていたんですね。本当にありがとうございます」

 ニッコリとほほ笑むと、藤司さんは顔を一瞬クシャクシャと歪めたが、すぐにいつもの様子に戻った。

「お人好しめ」
「褒め言葉だと受け取っておきます」

 長年のすれ違いが解消され、なんだかスッキリした。そう藤司さんに告げると、「まだまだ安心するのは早い」と声を堅くした。
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