年下御曹司は初恋の君を離さない
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「こんばんは、藤司専務。少しお時間をいただけませんか?」
「……こんばんは、小華和さん。次回の会合はまだ先のように記憶しておりますが」
和菓子店せせらぎ本店の奥まった所にある茶室。そこに俺が鎮座していることに、藤司は驚いた様子を見せたが、いずれこんなときが来るのを予想していたのだろう。
眉を一瞬顰めた藤司だったが、すぐさま企業人としての顔を装う。
トップに立とうとする人間であることをお互いが意識しているため、どうしても上っ面の顔は必要だ。だが、今は企業人としての藤司と話がしたい訳ではない。
一個人として、そして未来さんを想う男の一人として話がしたいのだ。
彼は、未来さんを自宅に送っていったあと、〝せせらぎ本店〟に戻ってきたのだろう。間違いない。