年下御曹司は初恋の君を離さない
どうやら俺の態度に腹を立てている様子だ。だが、自分の私腹を肥やすためには、俺は大切な結婚相手である。
丁重にしなければならないと思いながらも、やはり我慢は出来なかったらしい。
「小華和さん、知っていますか?」
「何をですか?」
書類を鞄から取り出し目を通し始めた俺を見て、畠山はますます気分を害しているようだ。
肌で伝わってくる怒りを感じながらも、俺は資料を見続けている。
しかし、敵もさることながらしぶとさだけは天下一品だ。
なんとかして、自分を売り込もうと必死の様子である。
「私、実は知っているんですよ? 貴方の秘書の過去を」
未来さんと同じ大学に行っていた、と言って俺の興味を引こうと考えたのだろう。
小さく息を吐き出し、資料に向けていた視線を彼女に向ける。
すると、ようやく自分の方を向いてくれたと気をよくした畠山は、真っ赤に彩られた唇で弧を描いた。
だが、すぐにその口元は醜く歪むことになる。