年下御曹司は初恋の君を離さない
「知っていますよ?」
「え?」
「どこかの女のせいで、心に深い傷を負ったことをね」
「っ」
言葉に詰まる彼女に、俺は意味深な笑みを浮かべる。
俺の表情に唖然としている彼女を横目で見たあと、再び手にしていた資料に目を向けた。
「知っていますから。聞く必要はありませんね」
表面上は穏やかに見せているが、言葉に込められた俺の怒りを感じとった様子の畠山は慌てた様子で自分の売り込みを開始してくる。
「えっと、そうですか……」
「はい」
「あ、あの……ここ最近の小華和堂の快進撃は素晴らしいですわね。経済誌のインタビューを受けられていらっしゃいましたよね?」
話を変えて、先ほどの話を払拭するつもりか。あからさますぎる話題の振り方に、痛々しさも感じる。