年下御曹司は初恋の君を離さない

「ええ、まあ」

 ようやく会話が成り立ったと喜ぶ畠山は、嬉々としながら続けた。

「海外にも小華和堂ブランドをもっと売り込みたいと書かれてありましたが、その夢は私と結婚すれば叶えられますわよ」
「……」
「小華和堂をトップメーカーにすることは可能ですわ」

 彼女と結婚することによってのメリットを打ち出す方法に切り替えた様子だ。

 黙ったまま耳を貸している俺を見て、手応えありと感じたのだろう。
 次から次に事業拡大の力添えをしたいと言い出した。だが、それはすべて家元、彼女にとって祖父の人脈である。

 確かに家元の人脈はすごいことは知っているが、彼女自身の力でもないのだ。
 それを自分の手柄のように言う彼女を見て、辟易してしまう。ますます未来さんに会いたくなってきた。

 彼女は自分の能力についてひけらかすことは決してしないだろう。
 どちらかというと謙遜するタイプだ。そういう控えめな未来さんが好きだが、もっと自分の能力と自分の魅力に気がつくべきだと思う。

 隣でああだこうだと将来ビジョンを話している畠山を見て、彼女とは決して同じ未来を歩くことはないと確信する。
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