年下御曹司は初恋の君を離さない


「う、嘘だ……。そんなぁ、困るよ」

 私は女だ。だが、友紀ちゃんは私のことを男だと思い込んでいる。
 それだけでも誤解を解いておきたかったのに……

 とりあえずメッセージアプリで連絡を取ろうとしたのだが、すでに彼女はアプリの使用を中止していて連絡をすることができない。

 こんなことになるのなら、彼女の携帯番号を聞いておくべきだった。
 今更後悔しても仕方がないが、悔やまれる。

 あと、友紀ちゃんの個人情報で知っている事と言えば、高校の名前ぐらいだ。
 それならばと女子校へ言って聞き込みをしたのだが……

「誰も知らないって……どういうこと?」

 謎を残したまま消えてしまった美少女、友紀ちゃん。
 そして、私に関してとんでもない誤解をしたままだ。
 だが、それを訂正する機会は残念ながら与えられることはなさそうである。

 彼女が言っていたことが実現されるのなら……誤解を訂正できるのは、友紀ちゃんが日本に戻ってきたときだ。

 だけど、それはいつになるのか。わからない。
 そして、もしかしたら一生訂正する機会を与えられない場合もある。

< 29 / 346 >

この作品をシェア

pagetop