年下御曹司は初恋の君を離さない
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「あの……副社長?」
「どうしたの? 未来さん」
「えっと、そのぉ」
「ん? 会社ではクールな秘書を貫き通す未来さんにしては歯切れが悪いね」
「……」
「めずらしいこともあるものだ」
クスクスと楽しげに笑っている友紀ちゃんだが、彼はきっと私がどうして困惑しているのかわかっている。
わかった上で敢えて私に問いかけてくるのだ。全くいい性格をしている。
ムッとしつつも、それを顔に出すのはマズイ。ここはまだ会社の中。そして、副社長室だ。
たとえ私と友紀ちゃんの二人きりだとはいえ、公私混同はよくない。
ビジネスとプライベートは完全に別だという考えの私にとって、ここでプライベートの顔を出すわけにはいかないだろう。
恐らく……友紀ちゃんは、私が秘書の顔を隠してプライベート仕様になるのを心待ちにしているのだろうけど。
わかっているだけに、ため息が零れてしまう。