年下御曹司は初恋の君を離さない
時計の針は夜の七時を越えた。終業時間はとっくの昔に過ぎてはいる。だからこそ、プライベートな話をしても問題はないのだと思う。
だが、内容が内容なだけに、切り出すことが困難なのだ。
友紀ちゃんはせっせとデスクの上を片付けている。仕事は終わったのだから、帰り支度をすることはおかしくはない。
私も早く帰り支度をするべきだとは思うのだが、このあとを考えると手を付けることができなくて困ってしまう。
オロオロしている私を横目で見たあと、友紀ちゃんは意味ありげに口角を上げる。
「ほら、未来さんも仕事は終わったんだろう?」
「え、ええ……」
「それなら早く片付けて帰ろうよ。お腹すいたでしょ?」
お腹はすいている。だが、問題は友紀ちゃんはどこで食事を取るつもりなのかということだ。
もしかして、もしかしなくても……また我が家なんて言わないだろうか。そうじゃないことを祈る。
まだ突っ立ったままの私に対し、友紀ちゃんは「ほら、早く!」と再びせかしてくる。
仕方がなく自分のデスクに戻り、帰り支度をし始めた。
デスクの上には何もなくなったことを確認していると、耳元で友紀ちゃんが話しかけてくる。