年下御曹司は初恋の君を離さない
「えっと……どこに?」
恐る恐る顔を上げながら聞いてみると、彼は爽やかな笑みを浮かべて言う。
「ん? 久保家だけど?」
「なんで!?」
思わず叫んでしまい、慌てて口を押さえる。
今日は他の重役たちは接待などで、すでにこのフロアには誰もいない。
もし、いたとしても少し離れた場所にある秘書室に部長がいるぐらいだろうか。
そのことに気がついてホッと胸を撫で下ろしていると、友紀ちゃんが嬉しそうに顔を覗き込んできた。
「なんでって……酷いなぁ、未来さん」
「え?」
「俺はもう久保家の一員みたいなものでしょ?」
「……そうかしら?」
「そうそう。ってことで、久保家で寝泊まりしても問題ないんだよね」
問題はある。大いにある。口を尖らせて言うのだが、友紀ちゃんは耳を塞いで聞くつもりはないようだ。