年下御曹司は初恋の君を離さない
「ほら、早く帰ろうよ。久保ママが今日は筑前煮炊いたよ~ってさっきメールくれたよ?」
「は!?」
どうしてうちのお母さんとホットラインで繋がっているのか、この人は。
唖然としている私の背中を押して、友紀ちゃんは家路を急ぐ。
本当に友紀ちゃんは強引だ。気がつけば友紀ちゃんが運転する車の助手席に乗せられており、「はい、出発」とご機嫌な様子で友紀ちゃんはアクセルを踏んだ。
ちょうど帰宅ラッシュに嵌まってしまったため、車道はかなり渋滞している。
私の家に着くには、まだ少し時間がかかりそうだ。
車内にはラジオがつけられており、数年前に流行ったアイドルの曲が流れ始めた。
「あ、これ。懐かしい~」
私に相づちを求めながら、友紀ちゃんはハンドルを握っている。その彼の横顔を見つつ、私はここ最近のことを思い出す。