年下御曹司は初恋の君を離さない
早く友紀ちゃんの元に戻り、今日の段取りの打ち合わせをしなければならないだろう。
こんなところで立ち止まっている場合ではない。
「しっかりしろ、未来。アンタは小華和堂副社長の専属秘書でしょ!」
自分自信を鼓舞し、私はスッと背筋を伸ばした。
今は仕事の最中だ。それも今日は大事な新商品のプレスリリース当日。
失敗が許されないのは、社員皆同じことだ。
カツカツとヒールの音を響かせ、私はいつも通りを演じる。
泣くのも戸惑うのも……そして告げることができなかった気持ちを悲しむのも今はお預けだ。
友紀ちゃんがいる控え室へと戻り、何食わぬ顔をして彼の前に立つ。
淡々と今日の段取りと今後のスケジュールを告げ、すでに会場には来客者が多数来ていることを伝える。
あとは、彼の一歩後ろに下がり、頼れるほど大きくなった背中を見つめ、彼のサポ―トをするのみだ。
控え室を出て、会場に向かう途中。友紀ちゃんは前を見据えたまま、後ろから着いてくる私に声をかけてきた。