年下御曹司は初恋の君を離さない

「未来さん」
「……はい、なんでございましょうか」

　声が震えそうになる。それをグッと堪え、いつも通りクールな秘書を目指す。
　キュッと手を握りしめ、彼の背中に向けて返事をした。

　今、友紀ちゃんがこちらを向いていなくて良かった。もし、彼が振り向いて私に話しかけてきたら……みっともないほど顔を歪めて心の痛みに耐える私の顔を見られてしまっただろう。

　そうならなかったことに安堵しつつ、彼の次の言葉を待つ。
　歩みを止め、だが目線は前を見据えたまま、友紀ちゃんは呟いた。

「今日で終わらせるから」
「え……」

　その言葉はどこか決意に似たものに感じて、私の胸は恐ろしいほど嫌な予感に苛まれる。
　終わらせるとは、何を意味しているのだろう。