年下御曹司は初恋の君を離さない

『ええ、このような場において個人的なことを話すのもどうかと思ったのですが……お話させていただきたく思います』

 おお、という歓声が上がる。カメラマンたちが一斉にシャッターを切り始める。
 インタビューアたちは、ボイスレコーダーを友紀ちゃんに向けて声を拾おうと必死だ。

 まさか友紀ちゃん自らが、プライベートについての質問を解禁にするとは思わなかった。
 しかし、ここは止めた方がいいだろう。

 ハッと我に返った私は、マスコミ関係者に「そのような質問はご遠慮ください」と割りいろうとしたとき、友紀ちゃんと視線が絡んだ。

 え、と口を開いたままの私を見つめ、友紀ちゃんは真剣な面持ちになった。
 彼の目がとても真剣で、私はその場に立ち尽くしてしまう。

 だが、彼の次の言葉は私にとって残酷なものだった。

『実は、私。婚約をいたしました』

 甘く私に愛を囁いていた唇は、今までで一番最悪なことを口にした。
 唖然として立ち尽くす私を、未だに彼は見つめてくる。
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