年下御曹司は初恋の君を離さない
私と友紀ちゃんは婚約なんてしていない。ということは、彼には別の相手がいるということだ。
どうして、こんな残酷なことを真っ正面を向き合って聞かなくてはいけないのだろう。
どうして、友紀ちゃんは私に酷い仕打ちをしてくるのか。
今すぐこの場から逃げ出してしまいたい。だが、私の身体は動いてはくれなかった。
心が冷たく凍えていく。そのとき、大学時代のあの瞬間を思い出した。
藤司さんに冷たい拒絶の言葉を言われた、あの瞬間だ。
心が再び閉ざされてしまうのか。そうなったらもう、恋はできないかもしれない。
視線の先には、友紀ちゃんの隣に畠山さんが立った。二人は婚約したのだろう。
勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼女を見て、砂のように足元からサラサラと崩れてしまいそうだ。
『私の公私とものパートナーである、その女性以外は考えられませんでした』
もうこれ以上は聞きたくはない。ようやく足が動き、その場から立ち去ろうとすると、友紀ちゃんが私に手を伸ばした。