年下御曹司は初恋の君を離さない
副社長と、彼の奥様である征子さん。二人のような関係は、本当に憧れる。
私にもいずれ二人のような、ずっと寄り添っていたいと思える人が現れるだろうか。
とりあえず、残念ながら今の状況ではなさそうだ。
二人に気づかれないようにこっそりと息を吐き出していると、副社長は先ほどまでの朗らかな様子から一変、神妙な面持ちになって私を見つめていた。
「未来さん。大事な話があるんだ。まずは、そこに腰掛けてくれるかな」
「大事な話……ですか?」
副社長は、征子さんに目配せをする。すると、征子さんは心得たように私がお見舞いで持ってきたフラワーアレンジメントをベッド近くの戸棚に置いたあと、腰を上げた。
「未来さん。私、ちょっと飲み物を買ってくるわね」
「あ、それなら私が!」
征子さんが扉に向かおうとするのを、咄嗟に止める。だが、彼女は首を小さく横に振った。
「いいのよ、未来さん。私はちょっと席を外しますから。主人とお話していてね」
私としては、このまま席を外したかった。
副社長からの大事な話というのを聞きたくなかったからだ。