年下御曹司は初恋の君を離さない
副社長の専属秘書になって二年。その前は、専属でなかったものの第二秘書として副社長付だった私。
副社長のちょっとした仕草だけで、そのときの彼の気持ちがわかるまでになっていた。
そうなるまでには長い年月が必要だった訳だが、それだけの歴史が私と副社長にもあると思う。
副社長は、現会長の息子であり、社長の弟である。
そして、副社長夫婦には息子が二人おり、その二人も小華和堂の社員だ。
お二人とも各支社で頭角を現していると聞く。
本社に時折顔を出されるため、私とも顔見知りである。
同年代の彼らが活躍しているのは、私も励みになるし、嬉しいものだ。
まさかとは思うが、その息子たちにご自分の地位を受け渡すつもりなのではないだろうか。
悪い人たちではない。さすがは副社長と征子さんのお子さんだと思う人たちだ。
しかし、それはそれ、これはこれである。
副社長に再度勧められ、私は渋々椅子に腰掛けた。
自分の手元をジッと見つめている私に、副社長は小さく笑う。