年下御曹司は初恋の君を離さない
「ビジネスとなれば、どんなことでも完璧なのにね。どうしてプライベートになると、こんなにも不器用なんだろうね」
「……副社長」
「自分ではしっかりしているつもりかもしれないけど、危なっかしいよ。本当に気をつけて」
「そ、そんなことはないと思いますけど」
「残念ながら、僕の言っていることは当たっていると思うよ。今まで変な男に引っかからずに済んだのは奇跡に近いんだからね」
恨みがましい視線を送ると、彼は肩を竦める。
「だって、本当だろう。こんなにキレイで可愛らしい女性なのに、男性から声がかからないなんてね。声をかけてくるのは、当社の後輩女子社員たちだけとは。まぁ、キレイ過ぎるというのも問題ありかもしれないね。男性は基本良い格好したいから、高嶺の花を摘み取ることはなかなかできないかも」
「……」
「……まぁ、それも仕方がないんだけど」
「え?」
副社長が早口で言ったため、先ほど口にした言葉は聞き取れなかった。
首を傾げる私に、副社長はコホンと咳払いをして仕切り直す。
「まぁ、それはいいとして。私は君が結婚するまでは、近くにいて守ってあげようと思っていたんだが……それはちょっと無理になってきた」
「……!」
「君も薄々気がついていただろう?」
私の顔を覗き込むように首を傾げた副社長と視線が合う。
優しげな瞳が、私に答えを促してきた。
小さく頷くと、「さすがは、私の専属秘書だ」と満足そうに頷く。