年下御曹司は初恋の君を離さない
「こうも何度も体調を崩すようでは、小華和堂の副社長職を全うできない」
「……」
「今は、社長である兄さんや、秘書の未来さん。専務たちが僕の穴を埋めてくれている。だけど、ずっとという訳にはいかないよ」
副社長の言う通りだと思う。
彼が抜けた穴は大きい。そう感じることは、日に日に増えてきている。
それは誰もが思っていることだろう。
今は、その穴を凌ぐべく、皆で力を合わせて補っている。だが、いつまでも副社長の椅子が不在という訳にはいかない。
それほど、重要なポジションだということだ。
黙りこくっている私を見て、副社長は困ったように目を細めて口を開く。
「未来さん。私は余力のあるうちに、副社長のポストを降りようと思う」
「副社長」
「早めにリタイヤして、征子さんとのんびり過ごそうと思っているんだよ」
「……決められたんですか?」
恐る恐るといった様子で聞くと、副社長は笑みを引っ込めて頷いた。
「ああ。決めたよ。未来さんに相談もせずに、悪かったね」
「いえ……」
これ以上身体を酷使したら、いつ何時また倒れてしまうかわからない。
それなら、少しでもゆったりとした気持ちで過ごした方がいいに決まっている。
副社長のためを思えば、最善な決断だと思う。
だけど、長年副社長に仕えていた私にはショックが大きい。