年下御曹司は初恋の君を離さない
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「あ! 友紀ちゃんからだ」
ただいま夜の九時半。
季節は冬から春へと変わろうとしている。
毎日ぐずついた天気が続いているのだが、今日は奇跡的に晴れ間を見ることができた。
疲れた身体で、傘を差して夜道を歩く。
それは憂鬱で、イヤなものだ。だが、今日はそれを免れることができた。
それだけで小さな喜びを味わっていたのだが、もっと良いことが一日の終わりに訪れたことに頬も緩む。