年下御曹司は初恋の君を離さない
私、久保未来、二十八歳、独身。
日本屈指のお菓子メーカー『小華和堂』の秘書部に所属し、副社長の専属秘書をしている。
身長は百六十九センチで、スレンダーな体型だ。
ヒールが高い靴を履くと、かなり背が高くなってしまうのが悩みのひとつ。
セミロングの髪は黒く、緩くウェーブがかかっており、プライベートでは下ろしている。
だが、仕事中は髪を一つに纏めている。
秘書という職種柄、重役と言われる人たちと会うことが多い。
だからこそ、女の部分をあまり前面に出すことはせず、クールな装いを心がけているのだ。
それは、セクハラ紛いなことをされないよう防衛しているせいでもある。
ということで、仕事中はもっぱらパンツスーツだ。
私は昔から中性的な雰囲気があるので、男性の部分、女性の部分をうまく使い分けをしている。
学生時代は不器用でそういう使い分けがうまくできず、辛い目にあったり、後悔することもあった。
だが、社会人になって年数が経ち、それをうまく利用できているように思う。
それが原因なのかわからないが、恋愛事とは無縁の生活だ。
一応女性には見える格好をしているが、どうも恋愛事には縁がない。
周りからは結婚したとか子供ができたとか、そんな祝い事を聞いているのに、私には恋人はいない。いたためしがない。
一度、恋愛事では痛い目に遭っているので、そのことも原因の一つだとは思うけど……
誰からも言い寄られていないのだから、もともと男性には見向きもされないのだと思う。
寂しいとは思うが、お一人様もなかなかに快適だ。
この頃では、「一生一人でもいいかぁ」なんて気持ちになっている。
結婚を勧めてくる両親には、口が裂けてもいえないけど。