年下御曹司は初恋の君を離さない


「ぶ、部長!」

 他部署の人間が踏み入れてはいけないフロアにいるだけでもヒヤヒヤしているのに、部屋の中にいる人間の了承もなく入っていくのはさすがにまずくはないか。

 そう思って部長に声をかけたのだが、私の制止を無視してズンズンと奥へと入っていく。

 そんな部長を唖然としながら見つめて、入っていいものかどうか。私は考えあぐみながらその部屋を見回す。

 それほど広くない部屋は、照明も落としており薄暗い。なんとなく陰気な印象が拭えない。
 暗い室内を皿のように目を細めて観察する。
 ようやく暗闇に慣れてきた目は、書庫のようなこの場所に色々なモニターが点在していることを確認する。
 しかし、人の気配が極端に少ない。

 確かに広い部屋ではないので、元々多人数は入らないだろう。
 しかし、それにしても部屋にいる人間が少ないように感じる。

 パッと見ただけで、二人……いや、三人だろうか。
 とにかく部屋の中が薄暗く、ただキーボードの音やパソコンのファンの音が鳴り響いているだけなのでよくわからない。

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