年下御曹司は初恋の君を離さない
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 私は副社長室の前に立ち、深く息を吐き出した。
 これから曲者で一筋縄ではいかないと言われている人物と対面するかと思うと、不安と好奇心で胸がドキドキしてしまう。

 前副社長は穏やかな人だった。それも私とは親子ぐらい年が離れている。
 だからこそ、変な気負いはなく専属秘書をすることができていた。

 だが、今度の副社長は私より年下らしい。恐らく二十五歳。
 普通に大学を出ていれば、社会人として三年は働いていたという計算になる。
 この前、智子ちゃんが『同級生なんですよ〜』と言っていたから間違いないはずだ。

 そんな基本的なプロフィールデータさえ、専属秘書をすることになっている私に知らされなかったのはどうかしている。
 智子ちゃんに教えてもらえたからわかっていただけで、彼女がいなかったら彼の年齢さえも知らなかったなんて……どう考えてもおかしいと思う。

 どうしてそんな頑なにベールに包む必要があったのだろう。
 そのことについても、新副社長に聞けば教えてもらえるのだろうか。

 とにかく、今は挨拶をすることが先決だ。これから一緒に仕事をしていく仲である。できれば仲良くしておきたい。
 ヨシッと小さく呟き気合いを入れたあと、私は副社長室の扉をノックした。

「失礼いたします。久保です」

 シンと静まりかえっている廊下に私の声が響く。
 すると、一呼吸おいて中から声がした。

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