年下御曹司は初恋の君を離さない
最初こそ、この状況に焦れてはいたが、どうしたって彼女が住所を明かさないのだからどうしようもない。
友紀ちゃんのことだ。何か理由があって、彼女の住んでいる場所を明かさないのだろう。
そう思うようにしている。
私はその葉書を裏返す。
鮮やかな野菜たちが並んでいる、色鮮やかな写真だ。市場の写真なのだろうか。
ビビッドカラーの野菜を見るだけで、仕事の疲れが吹っ飛び、元気になった気がする。
私は逸る気持ちを抑えながら、葉書の隅っこの部分を見つめる。
葉書の裏部分に、友紀ちゃんはいつも一言メッセージを書き残してくれているのだ。
今回はなんと書かれているのだろう。
ワクワクして彼女の字を追ったのだが、喜びのあまり葉書を握りつぶしてしまいそうになった。
慌てて手を緩め、もう一度彼女が残していたメッセージを見つめる。
『帰国することが決まりました。未来さんに会いに行きます』
油性ペンで書かれたその字は、とてもキレイだ。
見間違いかと思いながら、何度も何度も彼女の字を見つめる。