年下御曹司は初恋の君を離さない
「嘘よね」
「嘘じゃないですよ、未来さん」
私の心中などお見通しとばかりに、彼は返事をした。
でも、待って! 彼女は永妻友紀と言っていたはずだ。
名前の読み方は同じ、漢字も『友紀』と同じ字を使っているが、名字が違うじゃないか。
そう考えて胸を撫で下ろしたが、はたとあることに気がつく。
でも、彼は今言ったはずだ。
『友紀ちゃんと呼ばないんですか?』と。
それは私の疑問の答えではないだろうか。
でも、あの友紀ちゃんと副社長が、まさか同一人物なんてことは……?
私は混乱しつつある感情を抑えようと、必死に冷静を装う。
永妻友紀ちゃん。彼女が高校二年生のとき、痴漢に遭っていた彼女を助けたのが縁で親しくしていた女の子だ。
そして、あの子は紛れもなく女の子だったはず。
だけど、今、私の目の前にいる人は男性だ。性別が違うじゃないか。
全くの別人だ。だって、背丈だって全然違うし、男らしい体型をしているし。
あとは、声だって低くてセクシーで……
だけど、確かに思い出の中の友紀ちゃんと副社長の友紀さん。
思い出の中で一致するパーツがあるのだ。
薄い唇、長い睫。そして、それに隠れている可愛らしい瞳。
まさか、まさか、まさか……!!
戸惑い続ける私の耳元で、再び友紀さんは囁いた。