年下御曹司は初恋の君を離さない
5
「はは、相変わらず未来さんは可愛いな」
誰もいなくなった副社長室で、俺は笑い声をあげる。
廊下に飛び出した未来さんが俺の笑い声に気がついているか、それとも気がついていないのか。
どちらかわからないが、もし聞いていたとしたら眉間に皺を寄せて難色を示していることだろう。
その様子が手に取るようにわかり、ますます笑いが込みあげてきてしまう。
あの頃と何も変わらない彼女に、俺の頬は緩みっぱなしだ。
いや、変わっているところもある。
あの大人な女性の色気。あれには、参ってしまう。
フラフラとその甘い蜜に誘われて、何度もキスをしてしまいたくなるじゃないか。
ゆっくりと自分の唇に触れる。
未来さんの柔らかな唇の感触が、今もなお思い出せた。
彼女の熱を感じたら、身体が熱くなってしまう。そして、一緒に込みあげてくるのが、これまでの歳月のこと。
本当は、もっと早くに彼女の前に現れたかった。
もちろん素性もすべて明らかにして、未来さんに好きだと告白もしたかったのだ。