年下御曹司は初恋の君を離さない
あとで隆二叔父さんに聞いた話だが、あの頃の父さんはいつ心が壊れてもおかしくないほど、血なまこになって仕事をしていたという。
それは、再び大事な家族を手に入れるためだ。
父さんの昔からの悪友であり、個人で経営コンサルタントをしていた堤さんに協力を仰いで小華和堂の経営戦略を打ち出してもらい、経営を一気に立て直し始めたのだ。
ついでに、堤さんは現在も小華和堂の経営戦略部に無理矢理留められている状態である。
そして、父さんの弟である隆二叔父さんを無理矢理副社長に就任させた。
本人は現場が好きだとずっと渋っていたようだが、父さんに半ば脅される形で就任する決意をしたのだと聞いている。
隆二叔父さんの前に副社長の座にいたのは、そのときの黒幕、母さんと父さんを別れさせた張本人だ。
父さんはその黒幕をあっさりと排除した。
どんな手を使って副社長の座を退けさせたのかは……恐ろしくて聞きたくはない。
ただ、その一件以降。父さんを怒らせたらとんでもないことになる。それだけは明らかになり、小華和堂に関わる親戚たちは一斉に青ざめたという。
いつもは温厚でニコニコ笑っているだけだと思えた父さんが見せた執着心。
とにかく母さんを再び自分の元に引き寄せたい。その一心だったようだ。
父さんとしては毒ばかりしかいない小華和堂の未来なんて、実はどうでもよかったらしいけど。