年下御曹司は初恋の君を離さない


 結果としては、数年で母さんを再び我が手に引き寄せた父さんは、なにげにデキる男だったということだ。

 しかし、これでめでたしめでたしとはいかない。

 父さんが母さんを再び連れ戻すための算段はできたわけだが、母さんだってただ逃げてNYにいた訳ではない。
 語学万能な母さんは、通訳の仕事をするために渡米していたのである。
 
 再婚したから、すぐに日本に戻ります。なんてことにはならないわけで……
 マネージメント契約はまだ三年もある。その間はどうしたって日本に戻ることはできない。

 それに俺もNYでの生活がスタートしていたし、こちらの大学に入学していた。
 母さんも俺もNYから動けない状態だ。

 執着心が半端ない父さんはどうするのか、と思ったら、所謂通い婚をするようになった。
 
『ようやく何のしがらみもなく、君たちと過ごすことができるようになったんだ。僕が一秒でも長く君たちの側にいたいと願うのは当然のことだろう?』

 というのは、自分の父親の言葉である。聞いているこちらが恥ずかしくなってしまうような言葉を次から次に言い出す父さんに、母さんは呆れかえっていた。

< 84 / 346 >

この作品をシェア

pagetop