年下御曹司は初恋の君を離さない



 そこでも俺の思惑がうまく働いた、ということだ。
 未来さんは本当に危なっかしい人だ。そんな彼女を見たとき、オヤジ三人衆たちは絶対に気になって守ってくれるだろうと最初から確信していたのだ。

 小華和堂への就職が俺の腹黒な計画の一環だとわかったときには『血は争えないなぁ』と父さんは穏やかな顔をして笑っていた。
 そんな父さんを見て、母さんはなぜか遠い目をしていたのだけど。

 なんでも父さんが母さんを見初めたときにも……なんだか色々とやらかしていたようで。
 母さんの引き攣った顔を見たとき、『やっぱり父さんと俺は親子だな』と苦笑した。

 とにかく、誰から見ても大人な男になってから彼女の前に立ちたい。
 そして、彼女に俺を拒絶なんてさせない。絶対に捕まえてみせる。その一心だった。

 ようやく大学を卒業し、半年間ありとあらゆる勉強をしたのち、小華和堂に就職した。

 ただ、鳴り物入りでの就職はイヤだった。だから、すぐには経営陣には入らないと突っぱねて、母さんの旧姓を使い、永妻友紀として工場勤務から始めた。
 まずは現場をすべて見てから。きちんと会社全体を見たあとでなければ、経営なんてできるわけがない。

 もちろん、未来さんの目には入らないよう、細心の注意を払っていたのは言うまでもない。

 しかし、本当のことを言えば……さっさと未来さんの前に現れたかった。
 そして、あのときの高校生『友紀ちゃん』は俺なんですよ、と伝えてしまおうかと思ったのは一度や二度だけじゃない。

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