年下御曹司は初恋の君を離さない

 
 タブレットを操作しながら、自分に喝をいれる。今は仕事中だ。雑念は捨てなければ。
 私は彼の気持ちを知りながらも、それを知らないふりをする。そのスタイルを貫き通さなければならない。

 タブレットをタップし、今日の副社長のスケジュールを読み上げていく。

「今日のスケジュールですが、午前十時より会議室にて定例会、終わり次第羽田へ向かいます。そこでN社専務山崎様との会食。その後、社に戻って参りまして四時よりネット会議が行われる予定です。予定がない時間ですが、書類等に目を通していただきたいと思います。あと、商品管理室部長より副社長に面談希望が来ております。秋口に発売予定商品について、副社長のご意見を伺いたいということです。可能でしたら、今日中に面談をという希望でしたが、いかが致しましょうか?」
「商品管理室部長との面談、羽田から帰ってきてすぐで大丈夫そうかな?」
「可能だと思います。今日でしたらいつでも大丈夫だと伺っております。再度、部長に打診させていただきまして、後ほど副社長にお伝えいたします」
「うん、それでいいよ。あと、他のスケジュールについても了解しました。さすがは未来さん。きちんとフリータイムを入れ込んでくれているので助かります」
「恐れ入ります」

 小さく会釈をしながら、心の中で「よし!」とガッツポーズを作る。


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