失礼ですが、強い女はお嫌いですか?

新たな依頼


カランカランと小気味良いベルの音が店内に響く。


「いらっしゃい」

「ごめんね、少し遅くなっちゃった」


店内には既に何組かの客がおり、アイリスは接客に追われているようだった。
手伝おうかとリリエラが声をかけようとした時、店奥のテーブル席で控えめに手を振るセイレーンに気づく。

彼女の隣には俯いている女性が一人。すぐさま状況を理解したリリエラは、開けた口を閉じ、黙って店の奥へと足を進めた。


「こんばんは」


リリエラの挨拶に女性はビクリと肩を揺らす。怯えというよりは緊張している様子で、落ち着きなく目を泳がせている。
セイレーンに目配せし、女性の隣へと腰を下ろしたリリエラは意識して穏やかな声を発した。


「私はリリエラ、女性のための相談屋をしているの。聞いているとは思うけど、相談内容は秘密厳守で誰にも言わないし、報酬も一律で心配しなくても大丈夫。貴女のお名前を聞いてもいいかしら?」


女性の味方と言いながら報酬をもらうのは、タダほど怖いものはなく、安心感を与えるためだ。専業主婦でも払えるくらいの良心的な値段で、商売をしているアイリスには呆れられているけれど。

相談屋は基本的にアイリスの交遊の広さを利用した紹介制だ。依頼人の情報がアイリスに届き、日時を指定して依頼人がアイリスの店へとやって来る。


「わ、私はアニー。実は……」


アニーと名乗った女性は目尻に涙をため、少しずつ依頼内容を話始めた。
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